泡消火設備は引火性液体を対象とし、主に危険物取扱所および製造所・貯蔵庫、駐車場などに設置されます。水と消火薬剤を比例混合した水溶液を泡放出口より空気を含むエアフォームとして散布し、燃焼面を覆い空気をしゃ断するとともに冷却効果で消火を行います。設備は水源・加圧水送装置・原液槽・混合器・発泡器・制御盤・配管・配線などによって構成されます。


泡消火薬剤の消火原理
燃焼面に多量の液を放出し、燃焼面を覆うことで消火します。
つまり、放射された泡が横に拡がって流動展開すると同時に積み重なる層をつくり、燃焼物を覆って空気の供給を完全に遮断・窒息させて「窒息消火」することです。
そこに泡に含まれた水による冷却効果が加わり、“窒息と冷却の相乗効果”によって消火するのが、泡消火薬剤による消火原理です。
その①

出火
その②

泡が拡がり燃焼面を覆い、冷却
その③

消火
泡消火薬剤の濃度について
どの泡消火薬剤も高濃度につくられ、1%型、2%型、3%型と6%型があります。消火活動の際に混合器で水と混合した水溶液にし、それを発泡噴射して消火します。高濃度にしてある理由は、薬剤貯蔵槽が小型で済むようにするためです。
水溶液を作る混合原理(ラインプロポーショナー方式)

1%型泡原液とは
水99Lに対して泡原液(1%型)を1L入れて水溶液とします。

2%型泡原液とは
水98Lに対して泡原液(2%型)を2L入れて水溶液とします。

3%型泡原液とは
水97Lに対して泡原液(3%型)を3L入れて水溶液とします。

6%型泡原液とは
水94Lに対して泡原液(6%型)を6L入れて水溶液とします。

泡消火薬剤を凍らさないために
冬の寒冷地で水が凍りやすいことは誰でも知っています。泡消火薬剤の原液も、一定温度以下になると凍結して使用できません。(一度凍結しても液温が使用温度範囲内に戻れば、有効に使用できます)。このため、低温でも使用に耐えられる[耐寒用]や[超耐寒用]があります。

種別 | 使用温度範囲 |
---|---|
普通用 | −5℃〜+30℃ |
耐寒用 | −10℃〜+30℃ |
超耐寒用 | −20℃〜+30℃ |
泡消火薬剤の性能判断
泡消火薬剤の性能の判断基準には、発泡率(膨張比)とドレン時間(還元時間)があります。
そして、発泡率は低発泡と高発泡に分けられ、高発泡は発泡率によって種別が決められています。
泡消火薬剤の発泡率(膨張比)の基準について
(消防法施行規則18条1項1号・18条1項3号)
- 低発泡(泡ヘッド):膨張比が20以下の泡
- 高発泡(高発泡用泡放出口):
- 第一種……膨張比が80以上250未満の泡
- 第二種……膨張比が250以上500未満の泡
- 第三種……膨張比が500以上1000未満の泡
- 泡の発泡率(膨張比)とは泡水溶液の容量と泡容量の比です。
- 泡消火薬剤の発泡率
- 水成膜泡の場合は5倍以上。
- たん白泡、合成界面活性剤泡(低発泡)の場合は6倍以上。(ただし、水溶性危険物用は5倍以上)
- 合成界面活性剤泡(高発泡)の場合は用途により異なります。
ドレン化(還元化)とはそして[25%還元時間測定法]について
発泡した泡から水が徐々に還元されて泡膜が薄くなり、泡の抵抗力が減少することをドレン化(還元化)といいます。
- ドレン化を判断するものとしては、泡消火薬剤の性能基準を示すため法的に[25%還元時間測定法]があります。この測定法は泡質量の25%、つまり1/4が水に還元する時間を測定するものです。
- 規格では、たん白泡消火薬剤は60秒以上。なお、合成界面活性剤泡消火薬剤の高発泡のものは3分以上です。

危険物火災の種類
タンク火災
タンク火災は、大規模火災になるケースが多く見られます。燃料層が厚く、かつ、燃料液面からタンク壁上端まで距離があり、非常に大きな高温層を形成します。また、燃焼熱や幅射熱により高温になり消火活動も困難となります。いわゆる「深い火災」であることが特徴です。

流出油火災
流出油火災は、火災発生から消火するまでの時間が一般に短く、燃料層が薄いために熱がかかりにくい、いわゆる「浅い火災」であることが特徴です。

駐車場火災(立体駐車場の流出油火災)
立体駐車場火災は、車両からの流出油が燃える流出油火災に、立体火災が加わった複合火災になるのが特徴です。

泡消火設備の種類

① 固定式(チャンバー方式)
危険物貯蔵タンクの側壁上部に設けられ、火災時、タンク内の液体表面へ泡を放出して消化を行うための設備です。
また、SSI方式と呼ばれるタンクの底部から泡を方式もあります。
② 泡モニター方式
屋外危険物貯蔵タンクの注入口付近、特に岸壁や桟橋などに設けられます。
ノズルの射程を利用して遠方より多量の泡を対象物へ放出します。
船舶、海上などに流出した油火災やタンク火災の消化に用いられます。
③ 固定式(泡ヘッド方式)
固定泡ヘッドは、屋内駐車場、可燃性液体を扱う屋外/屋内のプロセス構造物、タンク、ポンプなどの機器類上部や周辺に配置されます。
火災時、ヘッドより泡を放射します。
④ 移動式(泡消火栓設備)
火災の状況に応じ、人が移動式のノズルを操作して消火活動を行います。
⑤ 固定式(高発泡放出口)
囲われた空間を多量の泡で埋め尽くし、冷却と酸素濃度の低下によりA火災(紙・繊維・木材類)やB火災(可燃性液体)に使用されます。
また、LNGなど低温液化ガスなどの貯蔵施設に対する火災抑制やガス拡散抑制にも用いられます。
一般対象物
駐車場など、消防法17条が適用される施設。合成界面活性剤泡消火薬剤、水成膜泡消火薬剤などが用いられます。
危険物関係
危険物取扱所など、消防法10条が適用される施設。主としてたん白泡消火薬剤が設置されます。
駐車場用泡消火設備
一般対象物(消防法17条)に分類される、駐車場火災に対する消火設備。速消性、再着火防止性に優れています。
特定駐車場用泡消火設備
閉鎖型水溶液ヘッドを用いた、特定駐車場用の泡消火設備です。連動型の高感度ヘッドにより、火災箇所のピンポイント消火が可能です。
危険物泡消火設備
消防法10条が適用される危険物取扱施設における消火設備。
泡消火設備の種類
泡消火薬剤混合設備
水と泡を自動的に一定比率で混合してエアフォームの水溶液を作る比例混合器(プロポーショナー)には、混合の方式により数種類あります。
泡消火薬剤
水と混合する前の泡原液。対象となる危険物の種類や火災の形態に応じて、最適な性能を持つ泡消火薬剤を選択する必要があります。