設置対象物の概要
塗装ブースは金属加工品などの表面を塗装するための小室で、「容積10m3程度のバッチ式の小さなもの」から「コンベアーで製品をブース内に運び、スプレー塗装や静電塗装されたあと、乾燥炉で乾燥・焼付される連続式の大型のもの」まであり、車両塗装の物では容積1,000m3を超えるものもあります。
設置対象物の火災危険
塗装ブースでは引火しやすいシンナーや塗料を微粒子で吹き付けるため、強力な排気ファンで屋外に排気していても火災危険は高く、出火原因として次のような事例があります。
- 被塗装物がコンベアから脱落してスパークする。
- 塗装機を可燃性溶剤で洗浄中に器具が塗装機に接触してスパークする。
- 塗料を一定温度にするためのヒーターが加熱する。
- 排気ダクトにたまった塗料カス・ホコリなどに着火する。
局所消火設備の構成
二酸化炭素消火設備は消火剤貯蔵容器と噴射ヘッドを配管で結び、自動起動装置(火災感知器)、手動起動操作箱、制御盤、警報装置(スピーカー)、二酸化炭素充満表示灯、点検用閉止弁などで構成されます。原則として起動方式は自動起動方式ですが、人がブース内に入るときは手動起動方式に切り替えます。
局所放出計算方式
局所放出計算方式
開口部の合計の数値が、ブースの容積の数値または周壁面積のいずれか小さい方の10%を超える場合は、全体を消防法に示される局所放出の計算方式で計算します。
消火剤量は開口部の大きさに応じて塗装ブースの容積1m3あたり2〜8kgとして計算した量に、換気装置が停止するまでに排出される消火剤量を加算し、これに危険物係数と液体係数1.4を乗じて計算します。消火剤放出時間は30秒とします。
全域放出計算方式
前記の数値が10%以下の場合でも、開口部がブースの高さの2/3以下にある場合は、放出前に閉鎖します。
消火剤量は塗装ブースの容積1m3あたり0.75〜1.2kgとして計算した量に、換気装置が停止するまでに排出される消火剤量および、2/3を超える高さにある開口部は、開口部1m2あたり20kgとして計算した量を加算し、これに危険物係数を乗じて計算します。消火剤の放出時間は1分とします。
塗装ブースの二酸化炭素消火設備システム構成例

全域放出方式
火災が発生したとき、不燃材に囲まれた区画内全体に固定噴射ヘッドで均一に消火剤を放出する方式で、区画内全体の消火に必要な消火剤濃度を保つことで消火を達成します。
局所放出方式
防火区画が設けられないときに防護対象物に消火剤を直接放出する方式です。燃焼面を完全に消火剤で覆うことができるよう、噴射ヘッドやノズルを配置することが設計上の重要なポイントです。また、いったん消火しても燃焼部分が高温であると空気の流動で再燃焼する恐れがあり、この方式の場合は、初期火災の段階で完全に消火することが大切です。