文化庁は、フランス・パリのノートルダム大聖堂において発生した火災を受けて、
4月 22 日付け通知により、次に掲げるものについて、防火設備の整備状況等の緊急 アンケート調査を実施されました。
(1) 国宝・重要文化財(建造物)
(2) 国宝・重要文化財(美術工芸品)を保管する博物館等
以下より調査結果の主な内容になります。
Ⅰ 国宝・重要文化財(建造物) |
世界遺産又は国宝の9割以上が全部又は一部木造で建てられ、これらの周囲の6割が木造密集地であるなど、
火災の潜在的危険性が高いと見られる状況を改めて確認。その他の重要文化財についても、概ね同様と確認。
※世界遺産又は国宝の 798 棟・99.9%、重要文化財全体の 4218 棟・92.8%が全部又は 一部木造で建造。
(「世界遺産又は国宝」では、世界遺産かつ国宝であるものは1棟として計算。以下同じ。)
防火対策の状況については、世界遺産又は国宝のうち、約2割で消火設備の整 備・改修後 30 年以上経過し、
老朽化による機能低下のおそれ。
また、整備・改修 後 30 年未満の消火設備を有する建造物(619 棟)についても、少なくとも一部に 毀損や不具合を申告するものが約半数。(要点検)
Ⅱ 国宝・重要文化財(美術工芸品)を保管する博物館等 |
美術工芸品の国宝を保管する博物館等では、多くの施設で消火設備等を設置し ているが、
約半数が 30 年以上経過し、老朽化による機能低下のおそれ。
また、国 宝・重要文化財を保管する博物館等では、少なくとも一部に
設備の不具合など修 理等を要する設備があるとの申告が約4割。
〈消火設備等の設置時期〉
30 年以上経過:45.5%、20 年以上 30 年未満:16.4%、10 年以上 20 年未満:18.2%、
10 年未満:20.0% (※ 国宝を保管する博物館等施設 55 件における状況。重要文化財全体
については、今回の調査対象では未実施。)
今後の対策について(2019年9月2日) |
今回の調査により明らかとなった課題を踏まえ、国宝・重要文化財(建造物)
や国宝・重要文化財(美術工芸品)を保管する博物館等について対応を採る必要。
その中でも、価値の重要性という観点からは、特に世界遺産や国宝について早急
に対策を講ずる必要。
上記、国宝・重要文化財(建造物)、(美術工芸品)についてガイドラインが通知されています。
〇国宝・重要文化財(建造物)のガイドラインには建造物固有特性、敷地特性、立地特性、等に項目を分け、
所有者が建造物の燃焼特性(脆弱性)を理解するとともに、防火設備等の整備、訓練の充実、その他防火対策について検討・実施することに役立つ内容となっています。
〇国宝・重要文化財(美術工芸品)のガイドラインには消火設備等、防火管理の体制、防犯設備などに対して、
基本的な考え方や点検手順を参考に防火管理に活用していただくという内容になっています。
基本的な考え方について抜粋して紹介します。
■消火設備等
・法令の定めに基づき、消火設備を整備しましょう。
・水損による被害が想定される場所にはガス消火設備を設置するなど、
文化財の特性等を踏まえたうえで消火設備の設置を検討しましょう。
・地震動で消火設備等に損傷を受けないように、耐震措置を講じましょう。
(参考)消火設備の設置について
・消火器には水、二酸化炭素、粉末など様々な種類があるので、文化財の特性に応じて適切なものを
設置しましょう。
・ガス消火設備は、スプリンクラー設備等による消火ではかえって美術工芸品をき損するおそれがある場合には、
スプリンクラー設備等の設置に代えてガス消火設備等の設置が望まれます。
・防火戸(防火扉、防火シャッター)・防火ダンパー建築基準法令上の義務に応じて適切に設置するとともに、
定期的に点検し、正常に作動する状態としましょう。なお、展覧区画については、文化財の安全とともに、
観覧者の安全にも配慮しましょう。
詳しくは下記よりご覧ください。
国宝・重要文化財の防火設備等の緊急状況調査結果(アンケート調査結果)について